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タイとの国境沿いにあるミャンマー東部のシュエコッコ。オンラインカジノや特殊詐欺の拠点とされ、夜間には建物にネオンがともっていた=2024年5月9日、タイ北西部メソトから、笠原真撮影
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 ミャンマー東部を拠点とする国際詐欺組織による、中国人ら外国人を巻き込んだ犯罪行為が深刻化していることを受け、タイ政府は5日朝、組織の温床と疑われるミャンマー国内の五つの経済特区に対する、電力や燃料、インターネット通信の越境供給を止めた。

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 ペートンタン首相が近く中国を訪問するのを前に、強硬手段で、事態の改善に向けた取り組みを国内外にアピールする狙いとみられる。

 この地域を巡っては、SNSなどでの誘いに応じてタイを訪れた人が犯罪拠点に連行され、特殊詐欺に加担させられる事例が頻発。タイのNGOは、これらの拠点に中国人ら6千人超が監禁され、中には日本人も含まれている可能性があると指摘する。事件などに巻き込まれることを恐れた旅行者がタイへの渡航をキャンセルするなど、観光産業にも悪影響が出ている。

「国の安全保障に対する脅威」首相訪中で協議の主題に

 タイ周辺にはこの地域を含め、国境を越えてタイ側から電気などの供給を受ける地域が点在する。現地報道によると、タイ政府は4日に開いた国家安全保障会議で、一連の事態を「国の安全保障に対する脅威」と認定。措置の実施を決め、ミャンマー側に伝えた。

 これに先立ち行われた同日の記者会見で、ペートンタン氏は頻発する詐欺が「(タイと中国の)二国間にとどまらず、世界に影響を与えている」と述べ、5日からの訪中で、この問題が中国側との協議における主題になるとの見方を示した。

 この地域では、ミャンマーで4年前に起きた軍事クーデターによる政情不安に乗じて、犯罪組織が勢力を拡大。地域を実効支配する少数民族武装勢力などは、犯罪組織から恩恵を受けているともされ、取り締まりが難しい状況だ。

 ミャンマー国軍は1月、犯罪組織の活動を巡り、「特殊詐欺の実行に不可欠な電力や通信環境は、ミャンマーではなく他国が提供している」と指摘していた。具体的な国名には言及しなかったものの、電力供給などが続く状況を念頭に、タイに責任を転嫁していた。

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